QLIP
Vocal&Guitar
小椋一親(Kunichika Ogura)
Guitar&Chorus
玉岡滉平(Kouhei Tamaoka)
Keyboard&Chorus
西村彩花(Ayaka Nishimura)
Bass
上野公大(Koudai Ueno)
今回出演してもらうバンドで、一番昔から知っているバンド、それがQLIP。彼らを最初に知ったのは、2011年頃だったと思う。その頃、まだ「10代で出したかった」のリリース前で、今から爆発的に売れようという時のキュウソネコカミのボーカル、ヤマサキセイヤがイチオシしているバンドの1つがQLIPだった。彼は、昔からアングラかつ捻くれたバンドが好きな一面があったので、QLIPもさぞかしヤベーやつらなんだろう、と若干ビビっていた記憶がある。当時よく出ていたライブハウスも近いところだったのですぐ対バンあるんだろうな、と思っていたが意外にもなかなか機会がなかった。今回の記事を書くにあたって、過去のライブ履歴やTwitterとか漁ってみたが、どうやら2011年はサーキット的なやつで一緒になったことはあっても、普通のブッキングやイベントでの対バンはなく2012年に入ってようやく対バンをしていたようだ。
最初に、彼らを楽屋で見たときの印象は失礼ながらまさに「おとなしく暗そうな大学生」という印象だった。でも、なんか全体的にオシャレで、挨拶とかしてもこちらが恐縮するぐらい丁寧で、普通に真面目そうな大学生の子たちだ、と思った。こんな子達がそんなヤバいライブするのか…?と思うぐらいに物静かな感じが漂っていた。いざ、彼らのライブが始まると印象は変わった。ヤバい。何がヤバいって、負のエネルギーがヤバい。多分この時も最初に演奏していて、彼らの初期からのキラーチューン「スーパーネコパンチ」はイケメンに媚びる女子大生をdisる歌なのだが、disが強烈すぎる。色々世の中を茶化したりするのは、その時「DQNなりたい、40代で死にたい」「サブカル女子」をリリースしたかしてないぐらいのキュウソが既に地位を確立(?)しようとしていたが、QLIPは茶化すなんてモノじゃない、単純に負の感情から発生するdisだ…!!。ある意味、最初に抱いた「暗い」という印象は間違っていなかったのだ、と感じた。その後も、彼らはチャラチャラしている大学生軽音楽部員をdisりまくり平然と「死ね」とシャウトを連呼する「自称バンドマン」を演奏したりして、よりインパクトを残した(チャラチャラはしてないけど4年間軽音楽部で大学を過ごした俺は苦笑いするしかなかった)。最終的に、俺はこう思った「これこそが『キレる若者』か…!!」と。(最初に書いた通り、ステージを降りた彼らは凄い丁寧で常識もわきまえたいい人たちです)。
↑俺のPCの中に残っていた、結構昔に対バンした時のQLIPの写真。一時は本当に色んなライブハウスで事あるたびに対バンしていた。
でも、その一方でサウンド面は、当時ブームだったアングラな「爆音」「ムチャクチャ」みたいな感じではなかった。練りこまれたツインギター、各楽曲に彩りを添えるシンセサイザー、アクセントをつけるリズムパターンやキメ、と練りに練られている印象を受けた。また、「負のオーラ」を出すためにポップながらも不穏な音遣いを活用しているあたりからも、凄い考えられてるな、と感心した。彼らは自称バンドマンをdisるだけある、しっかりと音楽に向き合うバンドマンだった。サウンド的に(当時はツジもギターを弾いていた)Funny Funk FishとQLIPは、「ツインギター&キーボードのサウンド」だったり、方向性は違うがアングラな側面を持つ、という共通点が多いからか、2012年〜2013年あたりは頻繁に対バンをしていた。お互い根暗なので大きく盛り上がることはなかったが、流石によく会うので、最初はだいぶよそよそしい間柄だったのもかなり打ち解けていった(と思う)。
その後も彼らは勢いを止めない。ギターボーカル小椋くん自身が大学生活を送ったと思われる京都という土地自体をdisる「都革命」という曲を作ったりしていた。とうとう土地までdisり出したか、と思ったが、メロ部分の低く抑えたラップ調から、サビでテンションが爆発する格好いいアレンジで、とてもQLIPらしさが出ている曲だ。京都をdisりながらも、若干和風なサウンドアレンジになってるところも良い。彼らはその都革命を収録した全国流通盤を出したり、ツアーを回ったり精力的に活動していた。俺的にもFunny Funk Fishと、「ドドド」というバンド(現在は活動休止)との共同企画イベントを開催した時に、出演してもらいキレッキレのライブをしてもらった姿を見て、順調に活動していくかと思ったのだが、彼らにもバンドマンとしての試練が訪れる。メンバーの脱退である。
2014年の2月以降、彼らとの対バンはしばらくなくなった。彼らのライブの活動ペースが落ちていったのもあり、また我々も出演するライブハウスが色々変わっていたのも理由かもしれない。だが、小椋くんは新たなメンバーを得たりして、着実に楽曲を作り、QLIPとしての活動ができなくなっても、キーボードの彩花さんとのユニット形式だったりでライブも続けていた。そして、2016年に若干復活をし、2017年から彼らはQLIPとしてまた定期的なライブ活動を始める。おそらくQLIPのNo.2である、作曲もしたり特徴的なリードギターを弾いていた玉岡くんは見事医師になってライブの参加は難しいそうで、ギターをあらかじめ録音して、その音と同期演奏するというスタイルだが、その形式でもライブ活動を再開したQLIPはもはや執念を感じる。
そのQLIPのライブを先日久々に見た。小椋くんはとうとう自分を神と言い出す曲を作っていた。面白い。いや、ガチで宗教とかそういうのではなく、本人も面白いと思ってやってるので全然いいんだけど、皆が小椋くんを崇める光景は面白い。ライブは、やはり暗い負のエネルギーもあったが、なんだか優しさも見せるように、そして何より昔より楽しそうに見えた。この「ライトアップ」という曲からも伝わるように、やっぱり凄いライブハウスが好き、音楽が好き、なんだと伝わるライブだった。様々な苦難を乗り越えて、さらにアングラにポップに、ダークにライトに、と表現の幅を広げたQLIPはまた今年精力的に活動していて、ますます楽しみなバンドだと思う。11/23の”Sugar Addiction”でも、彼らはその独自の世界に見に来た人を引き込んでくれるはずだ。もちろんこの日が凄い楽しみだけど、またQLIPとは頻繁に対バンしていきたい。